【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
ウイルスについて解説します。ウイルスは、悪魔でも、呪いでもありません。生物学的にウイルスを考えます。
●入試に出題される点を中心に説明していますが、発展や雑談も多く含んでいます。
●動画中の系統樹には、原核生物である古細菌ドメインは描いていません。
●ウイルスは、細胞でできていない、単独で増殖できない、RNAに遺伝子を持つものがいる、ATPを用いた代謝を行わないなどの理由から、生物とは呼べません。
●1mm=1000μm(マイクロメートル)=1000,000nm(ナノメートル)です。
●RNAウイルスには、逆転写酵素によって、RNAからDNAを作り出すものがいます。この、RNAをもとにDNAを作り出す現象を、まるで転写の逆のような現象なので、逆転写といいます。
また、ウイルスも、遺伝子をRNAやDNAに持ちます。だから、PCRでそれらを増幅にかけることで、ウイルスの存在量を推定することができるのですね。(ウイルス由来の核酸にのみ存在する配列に対してプライマーを設計すれば良いわけです。RNAはDNAに逆転写してからPCRで増幅させることが多いです)。
●空気中にはRNA分解酵素が大量に存在します。地球上の至る所に存在するRNA分解酵素は、元々生物の体にあったものと考えられています。もしかしたら、これほど大量に生物がRNA分解酵素を持つのは、ウイルスへの対策なのかもしれません。
●大学入試を意識して解説しています。現実には様々な例外があります。ウイルスを生物に含める学者もいます。
● ウイルスvirusの基本構造は、ゲノムを含む、つまり遺伝情報を担う、核酸( DNAあるいは RNAのいずれか)と、それを取り囲むタンパク質の殻からなっている。中心のウイルス核酸とそれに随伴するタンパクをコア coreと呼ぶ。このコアを保護する形でカプシド capsidと呼ばれるタンパクの殻が取り囲んでいることが多い。
さらに、宿主細胞からくっついてきた、エンベロープという脂質二重層を纏うものもいる。
A.M.Lwoffら(1957)は、「細胞内だけで増殖し、潜在的に病原性をもつ感染性の粒子」のうち、次のような属性をもつものをウイルスと定義した。
(1)核酸としてDNAかRNAのどちらか一方をもつ。
(2)核酸だけから複製される。
(3)二分裂で増殖しない。
(4)ATPを用いたエネルギー代謝系を欠く。
(5)宿主のリボソームをタンパク質合成に利用する。
これらのことから一般にウイルスは生物とは別の扱いをされる。
生物と非生物の間などと言われることもある。
その起原については、動画で説明した説の他に、小型のトランスポゾン(動く遺伝子)が独立して細胞外に出られる機能をそなえるに至ったものとする説など、色々な説がある。
●ウイルス感染が宿主細胞に 与える影響にもさまざまなものがある。
①子ウイルスが全く産生されない中絶タイプのウィルス感染。
②感染細胞そのものの死もなく子ウィルスもきちんと放出される生産的なウイルス感染。
③宿主細胞に潜伏感染が成立してしまうタイプのウイルス感染。そのような潜伏感染タイプのウィルスは数ヵ月後あるいは数年後に再活性化され、生産的感染へ誘導されることがある。(ウイルスの核酸はウイルスによって宿主の染色体へ挿入される事もあれば、挿入されないこともある。)
④宿主細胞が死に至り子ウイルスは産生されるタイプのウィルス感染
である 。
●動画に出てくるdsDNAの、dsとは、ダブル ストランド、二本鎖という意味である。ssDNAのssとは、シングル ストランド、一本鎖という意味である。
●コロナウイルスは、ssRNA、つまり一本鎖RNAにゲノムをもつウイルスである。このゲノムの情報は、まだ不明な点が多いが、 mRNAとなることが知られている。
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