“船の建造”や“修理”といった『造船業』を営む企業は長崎県内に59社(県まとめ)あり、さらに“設計”や“部品の供給”などを行う『造船関連企業』は数百社存在するといわれていて、非常にすそ野が広い業界です。いま業界全体の振興に向けて“新技術の開発”が進んでいます。輸出額は 1,300億円以上──輸出全体の8割以上を占めるなど、県の基幹産業となっている造船業を振興するため、県は先月、“ある企業”と連携協定を結びました。
再生エネルギ―分野で“造船関連企業”にポテンシャル
その企業は東京に本社を置く海運大手の商船三井──
世界の海をまたにかけ、原油をはじめとした様々な物資を輸送する事業を展開していて、昨年度の売上高は県の当初予算を優に超える1兆2600億円あまりと、日本を代表する企業の1つです。商船三井 エネルギー営業本部 杉山 正幸 第二ユニット長:
「造船産業。これを巡るサプライチェーン(関連企業)の皆様の実力や強みをしっかりと活かせていけるのではないかと。大きなポテンシャルを感じておりまして」協定では“二酸化炭素の排出量が少ない”など『環境に配慮した船』の研究・開発のほか『洋上風力発電』を中心とした“再生可能エネルギー分野”で両者が協力していくとしています。今回の協定に期待を寄せる企業の1つが、西海市にある大島造船所です。大島造船所 岩下 達郎 常務取締役:
「船に限らず様々な分野で色んな発展的な仕事を一緒にできるんじゃないかという風に思いますので、提携していただいたということはありがたいなと思うところです」10年以上にわたり“船の環境性能”の分野で商船三井と共同研究をすすめてきた大島造船所。
去年10月にはある技術が実用化にこぎつけました
プラスチックの“帆”を制御して省エネ
「支網切断!」それはこの日大島造船所から出航した一隻の船に搭載されていました。
巨大な白い物体──その名も『ウインドチャレンジャー』強化プラスチックでできた特殊な帆が 最大53メートルの高さまで広がります。商船三井 水本 健介さん:
「帆の一番上に風向風力計というものがついておりまして、風の向きを感知して帆の向きを調整します。
また、風の強さ、風力を感知しまして、帆の高さを調整します」この“帆”が風を捉え、推進力に変えることで、燃費の向上はもちろん航路によっては最大で8%ほどの二酸化炭素排出量の削減につながります。商船三井 エネルギー営業本部 杉山 正幸 第二ユニット長:
「化石燃料を焚きながら化石燃料を運んでいるという仕事は、なかなかこれからご評価いただけない状況になってくる。
お客様からも うちの荷物も“こういう船でやってくれないか”という話もいただいている。
商船三井の“海運業”、本業を“脱炭素化”していくということは是非やっていきたい」国内外で注目度が高まっている“船舶の省エネ技術”──
ひとたび実用化につながる技術が生まれれば、すそ野の広い造船産業においては製造業などの関連産業に広く経済波及効果をもたらします。実際、今回の製造にも10社以上が関わっています。大島造船所 岩下 達郎 常務取締役:
「骨組みとかは地元の企業さんにお願いしているものもありますので、ますますウインドチャレンジャーの数が増えていけば、地元の企業も活性化できるんじゃないかと。多数発注していただけるようになればありがたい話」県は商船三井との協定が、こうした省エネ技術を新たに生み出すきっかけになればとしています。長崎県 産業労働部 新産業創造課 黒島 航 企画監:
「こうした“環境対応船”の動きが 今後ますます活発化していくと考えておりまして、そうした中に県内の企業がどんどん参入、またはサプライチェーンの中に入っていけることに繋がっていくのではと期待している」
海洋再生エネルギーでも期待
さらに県は、商船三井の持つノウハウを 近年開発が進む“風力”や“波力”といった『海の再生可能エネルギー』分野で活用したい考えです。特に注目しているのは海に浮かぶ構造物を用いた『浮体式』と呼ばれる発電です。長崎県 産業労働部 新産業創造課 黒島 航 企画監:
「海に“浮く洋上風力の設備”が今後、全国に広まっていくのではないかと思っています。そこにつきましては、造船関連企業の技術が生かせる分野だと思ってますので、そうした『海洋エネルギー製造』の部分で 広く県内企業が参入できる部分があるのではないかと」県と商船三井では今後、県内企業との協議の場を作り、取り組みに協力してくれる企業を募っていきたいとしています。造船業だけでなく造船に関わる全ての企業を浮上させるきっかけとできるか。
県と大企業が結んだ連携協定の今後に注目です。
詳細は NEWS DIG でも!↓
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/352047
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